CAPM(資本資産評価モデル)とは
CAPM(Capital Asset Pricing Model / キャップエム)とは、市場全体のリスクに応じて投資家が要求する期待収益率を理論的に示し、株主資本コストを算定するためのモデルをいう。
無リスク資産の利回りに、市場リスクに見合う報酬を加えることでリターンを求める考え方に基づき、企業価値評価や加重平均資本コスト(WACC)の算定に広く用いられている。
CAPMと書いてキャップエムと呼ばれる。
CAPMの基本式
rE = rf + β × (Er − rf)
この式は、株主が要求するリターンである株主資本コスト(rE)が、無リスク資産の利回り(rf)に、市場全体のリスクプレミアム(Er − rf)をβ倍して上乗せすることで決まることを示している。
rE:株主資本コスト(株主が期待するリターンであり、企業にとっての資金コスト)
rf:無リスク金利(リスクのない資産の利回り。通常は国債など)
β(ベータ):株式の市場全体に対する感応度(市場の変動に対してどの程度値動きするかを示す指標)
Er:市場全体の期待収益率(株式市場全体の平均的なリターン)
(Er − rf):市場リスクプレミアム(市場全体のリスクを取ることによる追加的報酬)
CAPMの計算例
無リスク金利 rf = 1.0%
市場全体の期待収益率 Er = 6.0%
β = 1.2
rE = 1.0% + 1.2 × (6.0% − 1.0%)
= 1.0% + 1.2 × 5.0%
= 7.0%
この場合、株主資本コストは7.0%となる。
つまり、株主はこの企業に対して7%のリターンを期待して投資していることを意味する。
ベータ(β)の意味と解釈
βは、市場全体の値動きに対する株式の感応度を示すリスク指標である。
β = 1:市場全体と同じリスク(平均的な変動性)
β > 1:市場より変動が大きく、リスクが高い(リターン要求も高い)
β < 1:市場より変動が小さく、リスクが低い(リターン要求も低い)
β = 0:市場の動きに影響されない(無リスク資産など)
βは通常、過去の株価変動と市場全体の変動の相関関係から回帰分析によって求められる。
鑑定はかせベータは株式市場の基礎データから算出することもできるが、ベータを算出して公表してるサービスもいくつかあるぞい
市場全体の期待収益率(Er)とは
市場全体の期待収益率(Er)とは、市場全体の株式に投資した場合に投資家が平均的に期待するリターンをいう。
すなわち、「市場ポートフォリオ(全体の株式市場)」の期待リターンです。
このErは、個別企業の株主資本コスト(rE)を求める際の基準となるもので、
CAPMの式
rE = rf + β × (Er − rf)
の中では、市場全体のリスクプレミアム(Er − rf)の計算に使われます。
Erの意味を具体的に言い換えると
Erは「株式市場全体が、平均的にどのくらいの利益を生むと投資家が見込んでいるか」を示す値です。
したがって、次のようなものが指標として利用されます。
- 日本市場では TOPIX(東証株価指数) や 日経平均株価
- 米国市場では S&P500
これらの指数の長期的な平均リターンを用いて、市場全体の期待収益率(Er)を推定します。
市場全体の期待収益率(Er)はなぜ6%前後が使われるのか
これは「長期的な株式市場の平均リターン」が実証的にその水準にあるためです。
過去の統計データから、次のような傾向が見られます。
| 地域 | 想定される市場平均リターン(Er) | 無リスク金利(rf) | 市場リスクプレミアム(Er−rf) |
|---|---|---|---|
| 日本 | 約5〜6% | 約0.5〜1.0% | 約4〜5% |
| 米国 | 約6〜8% | 約2%前後 | 約4〜6% |
このように、株式市場のリスクプレミアム(Er−rf)は一般に 4〜6%程度とされ、
日本では長期国債の利回りを1%程度と仮定した場合、Er ≒ 1% + 5% = 6%前後という値が妥当とみなされます。
Erの求め方
実務上、Erは以下のような方法で推定されます。
- 過去データの平均から推定
長期的な株式市場の平均リターン(例:過去20〜30年のTOPIXやS&P500の年平均リターン)を使用。 - 将来予測に基づくアプローチ
予想配当利回り+予想利益成長率で算定。
例:Er ≒ 配当利回り(2.0%)+ 利益成長率(4.0%)= 6% - 国際的なリスクプレミアムの参照
世界的な金融機関やコンサルティング会社が毎年公表する「株式リスクプレミアム調査(Equity Risk Premium)」を参照。
CAPMの活用
CAPMは、リスクとリターンの関係を明示的に示すことにより、資本コストの合理的な算定を可能にするモデルである。特に、企業価値評価(DCF法)においては、CAPMによって求められる株主資本コスト(rE)が、割引率やWACCの算定に直接用いられる。
実務上の主な活用例は次の通りである。
・株主資本コスト(rE)の算定
・投資プロジェクトの採算性評価(内部収益率との比較)
・企業の資本構成におけるリスク調整
・企業間比較や業界ベンチマークとしてのリスク水準分析
CAPMは理論的な簡潔さと実務的な汎用性の高さから、現代のファイナンス理論における基本モデルとして広く用いられている。
